本作では、火力が優れた88mm砲と頑強な装甲を兼ね備えたドイツ軍の重戦車ティーガーと、機動力で勝る米軍のM4中戦車シャーマンが激突するスペクタクル・バトルを映像化。ヨーロッパ中のコレクターから本物の戦車を借り受け、英国ボービントン戦車博物館所蔵の世界で唯一走行するティーガー戦車を初めて撮影に使用するなど、その映画史上初となる画期的な試みはミリタリー・マニアの注目をも集めている。
『フューリー』は善悪を描いた、涙を誘うような従来の戦争映画とは異なると主張するデヴィッド・エアー監督は、本作への想いをこう語る。「物語は第二次世界大戦末期のドイツ。戦争終結の間際であり、ナチス政権が今にも滅びようとしている時だ。これは、アメリカ軍が参戦した有名なバトルを讃える今までのありふれた戦争映画とは違う。数年に渡り戦い抜いてきたアメリカ軍は当時、人員も底を尽きてきており、兵士たちも疲弊しきっていた。第二次大戦は勝つか死ぬまで戦うか、さもなければ重傷を負って帰されるかの戦争だった。全てのシーンがリサーチに基づいており、徹底したリアリティをもって描くことで真実を伝えたかった。」
ウォーダディー(ブラッド・ピット)
「ウォーダディーは何よりもミッションをこなすことを第一とし、合理的でまっすぐな男だが、彼には知られざる過去がある。」とデヴィッド・エアー監督は説明する。「戦場で戦い、ヨーロッパを解放することで過去の贖罪を求めている。自分なりのモラルに則って行動しており、それは市井のモラルとは相容れないが時代をよく映し出すものでもある。非常にストイックだがストイックさの中にも活き活きとしたものがあり、ユーモアと同朋に対する愛情、心底から湧き出る敵に対する憎悪が伺える。」

バイブル(シャイア・ラブーフ)
「ボイドはチームのサブリーダーだ」とシャイア・ラブーフは語る。「砲手を務め、冷血な殺し屋だが、信心深い男でもある。聖書を読むクリスチャンが戦場の殺戮とどう折り合いを付けるのかが興味深い。」この二面性を探求すべくラブーフは退役軍人に会い、役作りに臨んだ。ボイドと似通った性格を持つ人たちだったという。その一人に第二次大戦中に第2機甲師団に従軍したドン・エヴァンスがいた。「クリスチャンで正義感が強い。殺しは殺しでも“killing”と“murder”との二種類があり、その間には大きな違いがあると力説された」とラブーフはエヴァンスについて語る。「生き方は聖書に則っているが、それでも敵なら殺す。まあ神が特定の魂を刈り取る死神たちをこの世に産み落としたということなんだろうな。」

ノーマン(ローガン・ラーマン)
製作のジョン・レッシャーは、ノーマンの役の重要性についてこう語る。「ノーマンは映画の観客に最も近い立ち位置なんだ。軍事訓練を受けていない新入りであり、観客は彼の視点を通して戦車や戦場の現実を吸収していく。これは彼が成長を受け入れていくストーリーで、彼の経ていく軌跡がこの映画の軸となる。」デヴィッド・エアー監督も説明する。「第二次世界大戦末期にもなると、ろくに訓練も受けていない青年達がいきなり前線に立たされるのは何も珍しいことではなかった。バルジの戦いの後、米軍も人員が不足していたので、戦闘訓練をせいぜい3、4週間程度しか受けていない兵士達が一斉に戦地に送り込まれることもあった。」

ゴルド(マイケル・ペーニャ)
メキシコ系アメリカ人であるゴルドについて、デヴィッド・エアー監督はこう説明する。「第二次世界大戦では35万人ものメキシコ系アメリカ人が従軍しており、その多くは機甲部隊で操縦手の任務にあたった。ゴルドは洗練された男で、地元ではリーダー的な存在だが、戦場では疲れとストレスに耐えかね、アルコールに依存してしまう。戦地ではアルコール依存に陥ってしまう兵士は多く、酒気帯びで戦車を操縦する操縦手は少なくなかった。」

クーンアス(ジョン・バーンサル)
デヴィッド・エアー監督は説明する。「極貧の家庭で育った青年だ。大恐慌時代に幼少期を送った男で、履く靴もなく、8才の頃から農場で働いてきた子だ。余儀なく戦地へ行かされるが、戦闘の準備などできていない。ウォーダディーがチームの頭脳ならクーンアスはチームの肝っ玉なんだよ。」
メインキャスト5人は役になりきるため、撮影前にブートキャンプに参加した。「そこではチームとして思考し、機能するように訓練をほどこした」と軍事アドバイザーのケヴィン・ヴァンスは言う。トレーニングのメニューには全て意味がある。軍服、武器、食事は規範に忠実に従い、当時の様子を再現した。雨、泥、強風などあらゆる悪条件の中で演習させたし寝不足の状態でも戦わせたので、少しは当時の戦場がどんなだったか実感できたはず。ブートキャンプは6日間にわたって行われたが、最初の2日間は彼らを身体的にも精神的にも追い詰めていくべく組み立てた。体の節々がいたむくらいに疲弊させた。そういう状態からチームとして団結するように仕向けた。その変化が鍵となり、劇中に表れた。」
『フューリー』はオックスフォードシャーの草原やボービントン飛行場で12週間に渡り撮影された。イギリスでの撮影は物理的に都合が良かったと製作のジョン・レッシャーは言う。「イギリスには優秀なスタッフが多勢いるのも一つの理由だったが、撮影に使える大道具・小道具がとにかくさくたんある。戦車や装甲車などはドイツ軍のもアメリカ軍のもそろっていた。その上イギリスの光はとても美しく、また天候もドイツの当時の天候とうまくマッチングした。だから撮影するには理想的なところだった。」撮影に入る前、監督とスタッフはストーリーを詳細まで正確に再現できるよう、フューリーが立ち向かったであろう戦車の種類から対戦車砲のタイプや作戦で使われた兵器、軍服や兵士達の髪型にいたるまで徹底的に下調べをした。「ディテールが大事なんだ」とデヴィッド・エアーは言う。「観客が戦場のことを完全に理解できていなくとも、細部まで気遣った映画だと過去にテレビで見たニュースリールのイメージと合致する。そういうリアリティを追求したい。」
本作の撮影を担当したローマン・ヴァシャノフは説明する。「映画は全編フィルムで撮っている。単一的な色調の作品なので、色をよりきれいに映し出すフィルムを使いたかった。画角はワイドスクリーンなのでアナモルフィックレンズを使って撮影することにした。何度かテストをしたが画質も素晴らしく、ハイライトのところも奇麗に撮れており、ボケの利いた美しい絵になった。美しい景観と戦車の走行をとらえるのに一番いい方法だった。」 一番苦労したことの一つは光の射しこんでこない戦車内部の撮影だったという。「本物の戦車の中で数時間を費やし、ハッチをいじりながら光がどのように射し込んでくるのかを研究した。天候は曇りが多く、日の光がタンクの内部まで射し込んでくることはなかった。そこでLEDライトを床と壁に貼り付けた。それでも明るさはギリギリまで抑えた状態で撮影し、フォーカスと適正な露出をなんとか得られる程度にした。」